結婚を決定づけた出来事。それは富士山の特徴ある光景

私達夫婦は二人とも運動するが苦手ですので、付き合っていた頃のデートと言えばもっぱら、映画鑑賞に食事、ドライブに温泉旅行といった、のんびりしたものが多かったように覚えています。

映画は月に2~3度は必ず観に行き、そのパンフレットがダンボール一箱分、良き思い出として残っているほどです。

ドライブに関しても、いろいろなところへ行きました。

私達はおよそ10年という長い付き合いを経て結婚しましたが、付き合い始めて3~4年は、私がある特定の作家のポルノ小説を蒐集していましたので、ドライブと言っても古書店巡りがメインでした。今も昔も名古屋に住んでいますから、愛知・岐阜・三重の東海三県のめぼしい古書店にはほとんど行きましたし、ブックオフにいたっては、東は静岡の清水から西は京都まで、それこそあちらこちらに車を走らせました。

古本屋で買った本は、マンガも含めると、ゆうに700冊以上になっているでしょうか・・・

ひと通り、欲しかった本を集め終わると、ドライブの次なる目的は写真撮影に変わりました。
女房が漁村育ちですので、海とは逆の、山への憧れのようなものを強く持っていました。

初めのうちは納涼を兼ねての滝巡りでしたが、女房は次第に渓流の美しさに惹かれていき、付き合い出してどの時点だったか、カメラを持って出かけるようになりました。

当時はまだデジタルカメラがあまり普及しておらず、ネガフィルムで写真を撮るのが主流でしたが、ネガで渓流の美しさを撮るには限界がありました。

カメラ本体も性能のいいものに買い替え、フィルム自体もネガから、ちょっとした専門知識とテクニックを要するポジフィルムに替えました。

ネガ(陰画)は現像しますと、白黒のフィルムとして焼き上がってきますが、ポジ(陽画)は、写した風景がそのままの色彩のフィルムとして現像されてきます。色合いに微調整ができ、渓流の、サファイアのブルーとエメラルドグリーンを混ぜ合わせたみたいな綺麗な水の色を写すことができます。

デジタルカメラであそこまで綺麗な色合いを撮影できるのかどうはわかりませんが、私達は必然的に、いろいろな器材を買い揃え、写真撮影に凝っていきました。

名古屋から車で行ける山は、温泉旅行を兼ねて、たいていのところは行きました。岐阜の御岳、乗鞍岳、北アルプスの槍岳に中央アルプスの駒ヶ岳のロープウェイ。

そして最終的には、やはり富士山を撮りに行こうというところに行き着きました。

最初は、何円札かのすかし絵になっている本栖湖近くに泊まり、翌日、どこから富士山を撮ろうかと、本栖湖、精進湖、西湖、富士河口湖、山中湖といった具合に富士五湖を廻りました。

この時、西湖から富士河口湖に向かう途中で、富士山の珍しい現象に遭遇しました。
この時点では名称すら知らなかったのですが、富士山頂に傘がかぶったように白い雲が丸くかかる<傘富士>です。

タイミングよく、2~3枚の写真が撮れましたが、1時間も経たないうちに富士山は五合目ぐらいまで雲で隠れてしまい、河口湖に着いた頃には富士山の裾野しか見えなくなっていました。

いま改めて思い返し、よくよく考えてみますと、この<傘富士>が私達の結婚を決定づけたように思います。二人ともが富士山に魅了されたからです。

このようなたぐいのこと、付き合っている最中にはおそらく気づかないでしょう。後になって考えてみると、あれがそうかなぁ・・・と思い当たるのが、たぶん多いような気がします。
私達はこの後、10回は富士山に行きました。お気に入りは、精進湖から撮る<抱き富士>。
さすがに日本一の名峰だけあって、日本全国から来ているのでしょう。午前4時でも、ベストアングルの場所取りが大変で、午前5時だともう遅く、湖の水辺に三脚を立てる場所がなかったほど、大勢の人が湖畔に集まっていて、なかなかに苦労したものです。
富士山の写真は二人で数百枚撮りましたが、これは・・と思うベストショットの写真は一枚もなく、<傘富士>の写真も、額に入れて飾っておくほどのシロモノではありません。

でも富士山の写真も全部残してあります。将来、娘に「どうしてお父さんとお母さんは結婚したの?」と聞かれた時、その写真を見せながら「ほら、たくさんあるだろ? お父さんとお母さんは二人でよく富士山の写真を撮りに行って、仲良くなって、それで結婚したの」と、説明になっていない説明をするつもりでいるからです。

しかし、結婚して子どもができると、映画館やラブホテル、まして富士山や温泉旅行など、まったく縁がなくなりました。

娘がいますので、何かしらを失ったという感じはないのですが、やはり若い頃には若い時にしかできないことがあるのだと、歳をとってつくづく思います。

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